人を大切にし、夢を応援する「ちょっといい居酒屋」|株式会社 菜花野

投稿日:2025年8月27日(水) 社長インタビュー

大阪・弁天町で1987年創業の「菜花野」。取締役・筒井由美は、人を尊重し寄り添う経営で、働く人の夢や成長を応援。観察力やコミュニケーション力を磨ける環境と、戻ってこれる温かい職場づくりを大切にしている。

株式会社菜花野(なかの) 取締役 筒井由美(つついゆみ)

Q:筒井さん、今日はよろしくお願いします。まず最初に株式会社菜花野の事業内容から聞かせて頂けますでしょうか?

大阪環状線、弁天町駅からすぐのところで「ちょっといい居酒屋」をコンセプトにした菜花野というお店を1987年から運営しております。また、40年近く運営してきたノウハウを別の飲食店さんへ提供するプロデュース事業や、梅田などの開発地で働く方々へのお弁当の配達。料理人不足に悩むホテルへのケータリング事業なども展開しております。

Q:ありがとうございます。菜花野はお父さまが創業されたと伺っております。どのような経緯で経営に携われるようになったのでしょうか?

ひとり娘だった私は、高校のときには既に「継ごう!」と思っていました。とはいえ、後継ぎって一般的には男性がするものでしたし、でも私は女性ですし。果たしてどうしていくんだろうという雰囲気は少なからずあったんですよね。そんな中で父は、高校卒業後、すぐにでも修行をさせたかったようでしたが、その意に反して私は今の主人と恋に落ち、20歳で結婚しました。そして出産後、家計を支えるために飲食店でパートをはじめ、2016年には主人が創業したお店を夫婦で経営するようになりました。しかし、父が引退するまでには菜花野を継いでおきたい!という気持ちから2024年の株主総会で承認され取締役を務めさせていただくことになりました。現在は、菜花野の経営と主人のお店の経営とで、二足の草鞋を履かせていただいております。

Q:となりますと、これからさらに経営者として活躍されていかれるわけですが、どんなことを大切にしていかれようと思われていますか?

人を大切にするということです。私は子育て四訓という考え方が好きで、「肌を離すな」「手を離すな」「目を離すな」「心を離すな」と子供の成長にあわせて親の接し方も変えていきましょうね、という考え方です。でも捉え方を変えると、肌に触れることで信頼感を育み、次第に自主性が生まれ、努力する姿勢が身につき、最終的には自立し見守っていく、ということだと思うんです。つまり、相手を自分の子供と同じように尊重して寄り添っていこう、という姿勢です。この姿勢で菜花野に関わるすべての人に接していこうと思っております。

Q:相手を尊重する。なかなかできないことですよね。これから二人三脚で成長していかれる従業員さんにはどんな想いを持ってもらいたいですか?

菜花野で働いてよかった!菜花野でやってきたことが役に立った!と思ってほしいです。そして、たとえ別々の道を歩むことになったとしても、また気軽に戻ってこられるような存在になりたいと思っています。そのためには、従業員が何がしたくて、何を学びたいのか。そこに寄り添い、伝えられることは出し惜しみなく伝えることが大切だと思います。そうすれば、おのずと戻ってきてもらえると思うんですよね。

Q:具体的にどのようなことを伝えてらっしゃるのでしょうか?

例えばですが人との接し方、繋がり方です。飲食店の仕事ではなくても、どんな仕事でも人と人は繋がっていて、飲食業はその人との繋がり方を身に付けることができます。それはつまり、目配り、気配り、心配りですよね。それができるようになればどんな仕事にも活かせるコミュニケーションスキルが身につくと思うんですね。それが飲食業の素晴らしさでもあると思います。

Q:なるほど。でも、難しいことですよね。

はい。もちろん簡単なことではありません。でも、何があっても自分にだけ目を向けて仕事に臨まないでほしいんです。何があってもお客さまに目を向けてほしいんです。菜花野は和食メインのお店には珍しく、和気あいあいとした雰囲気があります。それは父が和食店ならではの悪しき習慣を排除してきたからですが、お客さまに対して作業的で無機質な接客をしたらそこは厳しく叱りますし、それが私にできる役割だと思っております。

Q:ありがとうございます。作業的で無機質な接客をされたら誰でも嫌ですもんね!さて、このあたりから読者さんが気になってるようなことを聞いていきますよ!まず、入社して取り組まれることからお聞かせください。

読者の方には、料理人希望の方が多いかと思いますが、まずはお客さんを見てほしいと思います。仲居さんのようにお客さまのことを観察し、お客さんのことを知ってほしいんですね。そうしないと同じお料理を作るにしても、自分目線で作ってしまうことになり、結果、お客さまに喜んでいただけないと思うんです。お料理をロボットのように作ってほしくないんですよ。

Q:サービススタッフも料理人の方も、まずはお客さまを知るところからなわけですね。中長期的にはいかがでしょうか?

これから菜花野は店舗展開をしていきます。どんな戦略かというと「ウリはこれです!」と私たちの方から打ち出していく従来のスタンスではなく、先にターゲットを決め、その方々が、いつ、誰と、何を食べたくて、それがいくらで食べれたらいいと思っていて、そしてどんな雰囲気で‥‥‥といった顧客目線にたった出店をしていこうと思っております。例えば、ターゲットが女性で、和風イタリアンで、ちょい飲みができるバル形式で、その上リーズナブルで、といった具合です。そこから逆算してお店づくりをしていきます。そこには当然、任せられる人材が必要になります。こういった戦略に沿ってキャリアアップしていっていただきたいですね。

Q:ここからなわけですね!ありがとうございます。インタビューも終盤ですが、菜花野の人材における強みについてお聞かせください。

やりたいことをしながら、夢を追いかけながら仕事ができることだと思います。実は今、娘が女優を目指しながら菜花野でホールスタッフとして頑張ってくれています。そして、来年、上京し本格的に女優業に専念するんですよね。そんな夢を菜花野で働いた2年間をエネルギーに変えて成功させてほしいと思っています。そしてこれは娘だからとかではなく、日ごろから頑張ってくれているスタッフにも同じ想いを持っています。お客さまに寄り添うように、頑張ってくれるスタッフにも寄り添って、ともに成長していきたいと思っています。

Q:ありがとうございます。最後になりますが、読者の皆さまへメッセージをお願いします。

この仕事は決して楽ではなく、悩みごとも多い仕事です。飲食業で働く人は温かく接してくれる人たちが多いです。思い悩んだら、積極的に相談してほしいなと思います。

株式会社菜花野(なかの) アルバイト 筒井紅葉(つついくれは)

Q:続いて筒井さんの娘さんである紅葉さん、よろしくお願いします。紅葉さんは女優を目指されていると伺いました。どのような経緯で働いてらっしゃるんでしょうか?

私は高校生のころから女優になりたいと思っていました。そのためには舞台などのお仕事から始めるのですが、どうしてもお稽古で1ヶ月ほど、お仕事ができなくなることがあるんですね。1ヶ月も仕事ができないとなると勤務先に迷惑をかけてしまいます。ですので、融通の利きやすい祖父が経営する菜花野で、高校卒業後すぐに働かせていただくことになりました。

Q:なるほど!そのようにして菜花野で活躍しながら女優を目指されてるんですね!どのようなことに期待され入社されたのでしょうか?

幸いなことに菜花野には会社を経営される社長さんが多くご来店されます。ですので、そこでしっかりと接客して気に入っていただき、少しでも将来の夢である女優の仕事に繋がるようなことがあればな、と思って入社いたしました。

Q:確実に夢を掴むためには、そういった考え方も必要になってきますよね。実際、働いてみて良かったことはどんなことでしょうか?

接客を通して、相手の方が何を望んでらっしゃるのかがわかるようになりました。この方には、どのようにお話したらいいのかな、どんなおもてなし方をすれば喜んでいただけるのかな、といったことです。芸能界は人と人との繋がりが大切だと聞いております。ここで学んだことを活かしていければなと思っております。

Q:仕事をしながら、将来の夢を実現するためのスキルが学べるなんて最高ですよね!逆に悪かったことはありましたか?

悪いことではないかも知れませんが、身内ってこともあって今まで頑張ってこられた社員さんの目はどうしても気になってしまいました。また、私が入社したことで働きづらくなってしまったことを申し訳なく思っています。でも、そう思ったのは最初のころだけで、社員さんたちも私のことを一社員として扱ってくれ、自分の夢なんかもお話していくうちにギクシャクした感じは自然となくなっていきました。

Q:ありがとうございます。仕事をしながら夢である女優を目指せる環境を整えてくれた会社には、どんな想いをお持ちでしょうか?

感謝の気持ちでいっぱいです。女優としての第一目標は、映画の主演を演じることです。その映画を通して私の姿をみてもらうことで恩返しをしたいなと思っています。

Q:紅葉さんは、本当にしっかりされた方なんですね。インタビューも終盤に差し掛かりますが、ここで紅葉さんの考える飲食業の素晴らしさを聞かせていただけますか?

相手の方を観察する力とコミュニケーション能力が上達するところだと思います。私はまだ女優の卵で、飲食の仕事だけをしてきましたが、これらの能力はおそらく、別の仕事でも役に立つと思います。特に営業職ですね。たとえばマグロひとつにしても、「マグロどうですか?」なんていう伝え方ではなく、お客さまのご来店人数や状況を観察し、どのようにお伝えしたら喜んで注文していただけるかな、なんていうことを毎日考えてやっています。なので、おのずと観察力とコミュニケーション能力が上達していきます。これが飲食業の素晴らしさだと思います。

Q:ありがとうございます。最後に読者の皆さまへメッセージをお願い致します。

立ち仕事ですので、体力的にはシンドイお仕事です。でもお客さまからの「ありがとう」は何ものにも代え難い喜びや達成感を味わえます。迷っている人はぜひ、飛び込んでみてください。