“人間的成長”こそが喜びを生む飲食店|株式会社飛天
罵声を浴びた高校時代の一皿が、すべての原点。反骨心から生まれた“よろこびの創造”は、食を通じて人から人へ受け継がれ、働く人の誇りとお客さまの笑顔をつくり出していく——それが飛天の使命。
株式会社飛天 代表取締役 中山曜誠(なかやまてるみ)
Q:中山社長、今日はよろしくお願いします。まず最初に株式会社飛天の事業内容から聞かせて頂けますでしょうか?
父が創業したお店を1983年に法人化し1号店であるチャイナダイニング飛天が発足しました。それから計5店舗の飲食店を運営しましたがうち2店舗は従業員へ営業譲渡し、現在はチャイナダイニング飛天、らーめん元喜神、京中華 飛天散華と計3店舗のお店を運営しております。
Q:ありがとうございます。中山社長は、どのような経緯で飛天に経営に携わるようになられたのでしょうか?
私は、父が中華メインの大衆食堂を経営している家庭で育ちました。長男だったこともあり、中学校に上がるころからお店の手伝いを始め、そこで料理が大好きになったんです。そして、高校生の時に中華料理店を経営しようと決意する出来事が起こりました。ある日、お客さまがちゃんぽんを注文されました。出来上がったちゃんぽんは、麺が3本ほどお皿からはみ出ていて、私はそのことに気付かず、そのままお席まで運んだんです。それがお客さまの怒りを招いてしまいました。お客さまから想像以上の罵声を浴びせられたんです。その瞬間「こんなに頑張っているのに‥‥‥」と感じ、同時に、悔しさと反骨心が芽生えたんですよね。その時に「誰にも恥じない中華料理店を作ろう。そして、働いている方が誇りを持てるお店にしよう」と強く決意しました。そして1983年、父のお店を株式会社飛天に法人化する際に、経営に関わるようになったんですよ。

Q:そんな出来事がお有りだったんですね。ゆるぎない決意をもって経営に携われたかと思いますが、どのような経営理念をもって経営されているのでしょうか?
掲げている経営理念は「よろこびの創造」です。水面に石を落とすと波紋が広がるように、食を通してお客さまに喜びを提供し、その喜びが広がっていって欲しいという想いを込めました。お客さまの喜びが私たちにも広がり、さらに私たちの家族や友人、取引先や地域社会にも波及していくことを願っています。
Q:でもどうして、悔しさと反骨心を持っていた経営者が、「よろこびの創造」という経営理念を据えるようになったのでしょうか?
中学1年生のころだったと記憶していますが、家族でなかなか外出する機会が少ない中で、初めて家族6人でとある遊園地につれていってもらったことがあったんですよ。その時に園内のレストランですき焼き定食を食べたんですが、もう、その定食がうまいのなんのって‥‥‥。この時に思ったんですよね。料理って味だけではなく大切な人とのふれ合いがあるからこそ、美味しく感じるんだなと。そして、そのよろこびがどんどん広がっていくのを感じたんですよ。「これが料理の原点なんだな」と心の底から思いました。そんな経緯があって経営理念を「よろこびの創造」にしたんですよ。

Q:何のために働いているのか、何のために飛天が存在しているのか、その答えが「よろこびの創造」なわけですね。ありがとうございます。さて、この辺りから読者さんが気になってそうなことを聞いていきますね!まず、入社後、どんな仕事から始められるのでしょうか?
意外かもしれませんが、飛天では調理師希望であっても、まずは接客から学んでいただきます。少なくとも1年は経験していただきます。なぜかといいますと、いきなり厨房に入ると、お客さまが何をどう召し上がられて、何にどうよろこびを感じられるのか?が分からないからなんです。それが分からなければ、お客さまがよろこぶ料理なんてできるわけがありません。だって自分が作りたいものを作ることになるわけですからね。
Q:確かにそうですよね!でも、かつては調理師希望者は厨房に入る、これが一般的だったかと思います。何か調理師の育成でご苦労されたことはございましたか?
ありましたね。もう大変でした。私が飛天に入ったころの職人は、とにかく態度が横柄だったんですよ。セクハラ、パワハラは当たり前で、自分の作った料理にいちゃもんがつけばへそを曲げて辞めていってしまう。でもそうなると商売できなくなるので、店長を含めたホールスタッフは、どんどん職人にへりくだるようになるんですよね。つまり職人が実権を握っちゃうんです。そんなお店がよろこびを提供できるわけなんてありません。そのためには色に染まっていない新卒の方々を採用して、接客から育成するようにしていますね。

Q:なるほど。となると社員教育が大変じゃないですか?
そうですね。ですので、内部外部を問わず研修を徹底して行っています。価値観研修から技術研修まで、幅広い角度からの研修を取り入れています。その中でも最も重視しているのは、人間的な成長です。私は高校生の時に「誰にも恥じない中華料理店を作ろう。そして社員も誇りを持てるお店にしよう」と決意しました。そのために、「誰にも恥じないお店」「社員が誇りを持てるお店」とはどういうものか考えた時、出た答えが「人間的に成長していこう」ということでした。たとえ別々の道を歩むことになったとしても、その先で「あなたは素晴らしい人だね」と言ってもらえるようになって欲しいんです。
Q:どこに行っても認められる人になることができる。それが飛天の最大の強みなんですね。ありがとうございます。インタビューも終盤ですが、ここで中山社長が考える「飲食店の素晴らしさ」を聞かせていただけますか?
幸せな思い出をお客さまの記憶に残せることだと思います。食は人々を幸せにでき、お店はよろこびを提供することができます。そのよろこびが私たちのよろこびに繋がり、どんどん広がっていきます。それが飲食業の素晴らしさだと私は思っています。人って自分ひとりが幸せになっても嬉しくないと思うんですよね。家族や友人、お客さまやそのご家族までが幸せだから、自分も幸せになれると思うんです。それを食を通して実現する。それが飛天の使命だと捉えています。

Q:ありがとうございます。最後になりますが、読者の皆さまへメッセージをお願いします。
「好きである」ということはとても重要なことだと思います。これは飲食に限らずそうですね。そうじゃないと続けられないと思うんですよ。食べることが好き、食べものが好き、飲むことが好き、人をよろこばせることが好き、そして料理をすることが好き。今のご自身を振り返ってみて、そう思われる方は、ぜひ、飲食業の門を叩いてほしいと思いますね。
株式会社飛天 チャイナダイニング飛天 店長 灰藤茂祐(はいとうしげひろ)
Q:続いてのチャイナダイニング飛天 店長の灰藤さん、よろしくお願いします。まず最初に灰藤さんのお仕事内容からお聞かせください。
2023年4月から店長をやらせていただき、現在はお店の運営全般を任されています。チャイナダイニング飛天は近鉄奈良駅から奈良公園に通ずる商店街にあって観光客の方がメインターゲットです。2023年4月というとコロナが明けてすぐのころで、客足が戻るまで、いかに少ないスタッフ数でお店を運営するかが一つの仕事でもありました。

Q:なるほど!ではこれから!といったところですね!ところで灰藤さんはどんな経緯で入社されたのでしょうか?
僕は元々、別の会社で営業職をしていたのですが、なかなか成果が出せずに向いていないのかな、なんて思って就職活動をしていた時期があったんです。そんな時に飛天の中途採用の求人広告をみて応募し、2010年ころにアルバイトから入社いたしました。
Q:ありがとうございます。どんなところに期待されて入社されたのでしょうか?
正直、期待というのはなかったんです。最初は働ければ何でもいいや、くらいに思っていました。しかし、社長である中山との面談時に創業時の想いを聞かされ、純粋に役に立ちたいな、と思ったんですよね。聞かされたのは、中山の記事にも書かれている「高校生の時にお客さまに叱られたエピソード」です。その話を聞いて中華料理全体の格上げに少しでも貢献出来たらな、と思いました。
Q:お話を伺っていると、中山社長は情熱的な印象で厳しい側面もお持ちなのかな、なんて思うのですが、実際に入社されてみていかがでしたか?
いえ、その逆です。とてもフランクなんですよ。当然、ビジネスなんで厳しい時は売上あげろ!なんて言われそうなものですが、そんなことはありません。むしろ、僕たち社員に対する教育に情熱的でした。何もスキルがなかった僕や、僕たち従業員に研修を通してたくさんの教育をしてくれました。接客マナーや各種スキルもそうですが、何より人間性が向上したと思っています。
Q:仕事をしながら、人間性を向上させることができる職場なんてそうないですよね!逆に「この会社のここがよくないな」と思うところがあればお聞かせください。
うーん、ないんですよね。むしろ感謝しているくらいです。実は僕、新大宮にある飛天散華でトラブルを起こしたときがあって、混んでて少しでも多くのお客さまにご入店いただくため、お客さまからお車のキーをお預かりして駐車場内の整理をしていたことがあったんです。その時、誤ってお店に突っ込んでしまったんですね。最悪の事態にならなかったのは不幸中の幸いでしたが、落ち込む僕に「やったことは大変なことだが、君の人柄や人間性があったからこれくらいで済んだんだよ」と声をかけてくださったんです。この言葉には本当に心が救われましたね。と同時に必ず恩返ししよう!と誓った日でもありました。
Q:中山社長は人間味あふれる方なんですね。ここで灰藤さんの思う飲食業の素晴らしさを教えてください。
仕事を通して、人間的に成長できることだと思っています。営業職で成果がでなかったころは、自分の悪いところにしか目がいきませんでした。しかし、飛天での仕事を通して、自分の良いところが見えるようになってきたんです。この仕事は常にお客さまとの距離感が近く、そのお客さまに全力でよろこんでいただこうと思って仕事をする。すると、ありがとう!と感謝されます。それを繰り返すことで、自分自身に自信が湧いてくるようになったんですよ。
Q:なるほど。本当に魅力的な仕事ですね!最後に読者の皆さまへメッセージをお願い致します。
なりたい自分には必ずなれます。なので夢があれば、それを絶対に諦めないで欲しいな、と思いますね。